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音いじりのためのシンセの基礎

対象音源:アナログシンセや、そのシミュレータなど。

曲ではありません。
シンセを入手して音いじりを自分でしたいけど、
自由度が高すぎて何やったら良いのか見当がつきづらい・・・という人のための、
基礎になる部分のテキストみたいなものです。

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■シンセサイザーって何?■

シンセサイザーというのは日本語に直訳すると、
「合成するもの」
というような意味があります。

つまり、音を合成するためのものですね。
重要なのは、必ずしも生楽器の再現をするものとは限らない、という事です。
欲しい音・イメージした音に近いものを作れる楽器だと思ってください。
(ここが分からない人にとっては、
 シンセ=電子音=つまらないとか難しいとなってしまいます。)

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■基本的な構成■

合成方式が特殊なものを除けば、最小限に近い構成は、
以下のようなものになっています。

VCO─VCF─VCA

LFO EG

見慣れない言葉が並んでると思いますが、以下に示します。

VC:電圧制御の略。(Voltage Controled)

VCO:電圧制御されたオシレータ(発振器)
VCF:電圧制御されたフィルタ(濾過器)
VCA:電圧制御されたアンプリファ(増幅器)

LFO:低周波発振器(モジュレーションに使う)
EG:エンベロープ・ジェネレータ(詳しくは後述)

これらを使って基本的な音作りをする事になります。

なお、サンプラーの場合、オシレータに相当する部分が、
サンプリングされた波形という感じになると思ってください。

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■それぞれの役目■

基本構成は先に示しましたが、それぞれがどんな役目を持っているか、
もうちょっと分からない事には、目的を持ちながらいじれませんね。

オシレータ・・・基本的な波形を選び指定された周波数で鳴らす(正弦波・矩形波・ノコギリ波・ノイズ等)
フィルタ・・・オシレータから受け取った波形を削る(音の明暗の具合が変わる)
アンプ・・・波形の増幅(音量調整)

この3つは、ほぼ名前のとおりです。

ここだけでもある程度は音が作れるわけですが、そのままでは表情をつけ辛いので、
LFOやEGが、上の要素に対してちょっかいを出すことで、音の印象を変えます。

では、どのようにちょっかいを出したら、音が変化するのでしょうか。

LFOがオシレータに作用・・・音程が揺れる(ビブラート)
LFOがフィルタに作用・・・音の明暗が揺れる(ワウ)
LFOがアンプに作用・・・音量が揺れる(トレモロ)

これは普段から打ち込みに親しんでる人なら想像しやすい範囲だと思います。

では、残ったEG、エンベロープ・ジェネレータとは、何をするものでしょうか。

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■エンベロープについて■

エンベロープとは、楽器の単音が鳴り始めてから終わるまでの、
時間軸に沿った音量変化をグラフにしたものだと思ってください。

一例として、こんな形のグラフになります。
(注:縦軸が音量方向、横軸が時間方向。)

 │     /\
 │    /  \
 │   /    \___
 │  /         \
  │ /           \
  └────────────────

つまり、先に作っておいた大まかな音に対し、イメージした音量変化を付けてやって、
ようやく楽器らしい音の特徴がつけられるわけです。

この変化の具合を生成するのが、EG、すなわち、エンベロープ・ジェネレータです。

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■音を波形だけで考えない■

ここからシンセ的考えが強くなります。
高校物理や音楽の授業で言う音の考え方と変わってくる部分なので、気をつけてください。

これまで見てきたシンセサイザーの仕組みから、こんな事が言えそうです。
「音の印象は波形(倍音構成)だけでは決まらない」
「エンベロープによって楽器らしくなってくる」
というわけで、代表的なエンベロープについて見てみましょう。

・持続系の楽器

 │
 │ ┌────────┐
  │ │        │
  │ │        │
  │ │        │
  └──────────────

見たまんまですね。
音がすぐに立ち上がり、その音量のまま鳴り続け、
鳴らすのを終わらしたら即座に消えるというタイプの楽器に使います。
オルガンなどはこのタイプに近いです。


・減衰系の楽器

 │
 │ │\
  │ │ \  
  │ │  \ 
  │ │   \
  └──────────

音が鳴り始めたら、すぐに消える方向に向かうタイプ、
打楽器系の音を作りたいときに使います。
ちなみに、左右方向を逆の形になるようにしてやると、スローアタック、
すなわち音量がじわじわと立ち上がってくる形になります。


・複雑な音量変化を伴う楽器

 │     /\
 │    /  \
 │   /    \___
 │  /         \
  │ /           \
  └────────────────

最初に出したグラフですが、
「音の立ち上がりに若干の時間がかかり、
 その後少し減衰、
 持続している間は音量がある程度安定していて、
 音が消えるときには少し余韻が残る。」
という形ですね。
これはストリングス系の音量変化に使ったりします。

つまり、基本的な波形でも、これらを用いる事で、変化をつける事が出来るわけです。
(実際に音いじりをする際、エンベロープを決めておいてから、
 波形を差し替える人も居るくらいですからね。)

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■どうやっていじるのさ?■

エンベロープの形に付いては取りあえず説明したわけですが、
それをいじる際に知っておかないといけない部分です。

よく、エンベロープは、ADSRというような表され方をします。
(細かいものになるともっと多いですが、基本は4つだと思ってください)
それぞれ以下のような意味があります。

A:アタック。音の立ち上がり。
D:ディケイ。(立ち上がった後の)音の減衰。
S:サスティン。音が持続する部分。
R:リリース。音の余韻。

で、これらを音量方向でいじる場合には、レベルという言葉がつきます。
時間方向でいじる場合には、レートという言葉がつきます。

先に示した、エンベロープのグラフに照らし合わせて考えて見ましょう。

 │     /\
 │    /  \
 │   /    \___
 │  /         \
  │ /           \
  └────────────────

音が立ち上がりきるまでの時間が、アタックレート。
そこから減衰して持続部分の音量に移行するまでの時間が、ディケイレート。
持続している間の音量が、サスティンレベル。
鍵盤から手を離して音の余韻がどのくらい時間として残るのかが、リリースレート。

このような感じだと思ってください。

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さて、どうだったでしょうか。
最初からパネル上に色んな要素が並んでいると分かりづらい部分も、
このように、機能とその持つ意味合いを知っていくと、
少しずついじる見当がつくのではないでしょうか。

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